前日の猛吹雪のためか、川が雪に覆われ、樹木にも雪が吹きつけられていました。
美瑛川を見たく、雪の土手を這うように上がって、見渡したら雪の川でした。
(左側に足跡が見えますね。ここから登って、土手に上がりました。白い線が川の区切りのようです)
誰か歩いたのか、その足跡を頼りに深い雪の中を泳ぐようにして林に入りました。
奥に向かって行くと、土手に突き当たります。
「三浦綾子記念文学館」
当日は閉館していました。来訪者はなく、タクシーの運転手さんに待ってもらい、林に向かいました。
物語では、夫婦間の疑惑と愛憎が言動を突き動かして周囲をも苦しみに巻き込んでいきます。
どんなことが最も喜ぶのかを知り、相手が最も辛いと感ずるやり方も分かる、人だけが行使できることかもしれません。相互に傷ついていく、
嫉妬や疑惑は、どうすることもできない業のようなものだと思います。
作品の場面は、樹木に流れる樹液の温かさを感じながら静かに癒される、そこで得られる平和、素直な心への再生を試みました。
自然は、あるがままの姿です。そこに触れた時に人は癒され、素直になるのだと思うのです。
作品作りでは、陽子をモデルにしていますが、樹木に手を触れて願う心を向ける、そんな場面づくりです。
樹木に精神性を重ねました。主人公を柔らかく表現していますが、写真ではぼやけています。
2月末頃に撮った、見本林の風景をご紹介しましょう。
小説「氷点」の場面を、和紙の素材で表現しました。
場面は北海道旭川市にある国有林「外国樹種見本林」です。
「この見本林を三百メートルほどつきぬけると、石狩川の支流である美瑛川の畔りに出る。氷を溶かしたような清い流れの向こうに、冬にはスキー場になる伊の沢の山が見え、遥か東の方に大雪山につらなる十勝岳の連峰がくっきりと美しい。子供たちは林の中の鬼ごっこや、かくれんぼに飽きると、美瑛川で泳いだり魚をすくって遊ぶのだった。」
小説家三浦綾子は、この場所を小説の重要な場所として設定しています。
「氷点」は映画やドラマで再々、放映されているので、あらすじは省略します。この川原で娘
るり子が行きずりの男性に殺され、辻口病院院長とその妻夏枝との嫉妬や様々な感情が渦巻く
発端となった場所です。
旭川夏祭りの時、妻が夫の職場の眼科医村井と逢っている間に、娘のるり子が美瑛川の川辺で殺されました。
そして、辻口の養女となった陽子は自分の出目を知り、明るく生きようとするが、あまりの辛さに自分の死をもって終わらせようとする、自殺を図る場所に選びました。
陽子が自殺を図ったのは美瑛川原ですが、和紙絵は陽子の心の安らぐ場所として見本林を選びました。
「しかし林の中の雪は深かった。ひざまで埋まる雪の中を一歩一歩、歩いて行った。時折り音もなく木の上から、雪がはらはらと散った。雪が吹き付けられて、片側だけが白い松の幹に、陽子は歩きなやんで手をかけた。・・・・(小さい時からよく遊んだ、思い出の多い林だわ)・・・やっとの思いで林を抜けると、美瑛川の流れが青く美しかった。川風がほおを刺した。川の凍ったところを渡って、陽子はるり子が殺されたときいていた川原にたどりついた。」
「氷点」心の風景