<土佐典具帖紙(とさてんぐじょうし)>  

  羽のように薄くふんわりとした手触りの「土佐典具帖紙」があります。厚さ0,03ミリという非常に薄い和紙で、「カゲロウの
 羽」とも言われています。 国の無形文化財にも指定されており、貴重なものです。薄く、繊維の長い特徴をもつ紙は、和紙絵にも
 欠かせない素材です。薄い紙を、さらに指先で薄く伸ばしていくのですが、決して破れない丈夫な紙です。作品の仕上げに、そっと
 重ねて貼っていき、何枚も重ねることで、作品の深みを増すと同時に、絵の存在感も浮かび上がってきます。

  最近、この和紙を漉く職人が少ないそうです。1000年以上の歴史をもつ手すき和紙は、手間をかけた割には需用がなくなり、
 最近は機械で漉くことも多くなっています。 和紙に触ってみると、手で漉いた和紙と機械での違いがよくわかります。
 手で漉いた微妙な紙の伸びと柔らかさがあります。「すけた」で、1枚1枚を磨かれた技で漉いた和紙は、貴重なものです。和紙絵
 作りで、1枚の和紙を掴みながら、必要な大きさにちぎるため紙がシワシワになってしまいますが、すぐにもどる柔らかさがありま
 す。
  日本独自の「手すき和紙」づくりをいつまでも続けて欲しい、心からの願いなのです。子供の時から、和紙の肌触りに惹かれて
 いたわたしには、宝のようなものです。日本の美しい伝統の一つ、外国からも関心を寄せられている「手すき和紙」を、身近なとこ
 ろで見直したい、との思いが、高知の「いの町」を尋ねるきっかけになりました。この和紙でやはり、日本の美しいものを再現し
 たい、土佐和紙に触れての感想です。
 
 <和紙の原料>  
  高知県では、紙の原料、「楮」、「三椏」は全国で50%以上の生産になっています。 原料の特徴を簡単に紹介しましょう。

 「楮紙(コウゾシ)」: クワ科の植物。古くから和紙の主要原料になっていました。 繊維が長く、よく絡み合っているので非常
 に丈夫な紙になります。長く保存しておくのに適していて、重要な文書などに用いられてきました。また、障子紙やかさ紙など、
 いろいろな用途もあり、タイプライター原紙も作られています。
 「三椏紙(ミツマタシ)」: ジンチョウゲ科の植物。原料としての収穫は数年かかります。高知では明治になってから漉かれる
 ようになりました。繊維は細く短いのが特徴。紙の面が滑らかなので細字用紙として使われることが多いようです。日本の紙幣と
 いうと、1万円札を思い出しますが、「ミツマタ」で作られているそうです。
 「雁皮紙(がんびし)」: ジンチョウゲ科の植物。繊維は細かく、紙面は滑らかで光沢があります。水に弱く収縮しやすいので、
 紙面に小さなシワができます。太字用には向かないので写経や手紙等の細字用として用いられているようです。


「土佐和紙」にふれての一口メモ

 
  高知から、いの町駅に行き、構内から外に出ると、「ようこそ 紙の町
 伊野へ」の看板が目に飛び込んできました。「やっと、目的地に着いた」
 という、わくわくした気分です。

  駅前の交差点を渡り、左側に郵便局があります。そこを右折すると、
 紙の博物館の看板が見えます。 館内に入り、展示してある日本古来の
 文化和紙の歴史を見た後、手すき和紙づくりの体験をしました。小、中
 学校の生徒さんや外国からも多くの方が訪れ、和紙に触れて、手すき体
 験を楽しまれるようです。
   (写真は、庭に植えてあった楮の木です。職人さんが漉いています。
      水分をとり、簡単なものは機械で乾燥させます。)
   

  展示・即売コーナーには、「土佐典具帖紙」(非常に薄いものです)
 など、種々の土佐和紙や、和紙を生かしたオリジナルグッズなどもあり
 ました。欲しいものばかりです。
 

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