(平成19年札幌宝生会「別会」 小樽市能楽堂での発表会に、録音させていただきました。物語とは別の謡です)

和紙で「能」場面を再現       ここでは、能の物語を簡単に紹介します。
     

   題目:半蔀(はじとみ)  音楽の再生はこちらです。→    


 物語は、源氏物語の『夕顔」の巻から素材をとっていますが、光源氏に愛され
 る女主人公、夕顔が物の怪におそわれ急死してしまいます。
 このテーマは、命の儚さで、「夢幻能」とも言われる幽玄的な美しさを表現して
 います。
 平安時代の、ある夕暮れに、光源氏は人里離れたところで、垣根に白い花が
 咲いている家を見つけました。そこに住んでいる訳ありそうな女主人、夕顔と
 の逢瀬がはじまります。夕顔は、香を焚き染めた扇に、切り取った
 夕顔を載せ、和歌を添えて童女に持たせました。
 
  『心あてにそれがとぞ見る白露の光添えたる夕顔の花』

  好感をおぼえ、源氏が寄せた返歌です。

  『寄りてこそそれかと見め黄昏にほのぼのと見つる花の夕顔 』

 源氏と夕顔は互いに素性を明かさないまま、逢瀬がはじまります。
 この物語の中心は、突然、急死した夕顔の亡霊が、半蔀戸を押し上げて
 (平安時代の寝殿造りで、雨風よけの戸のようなもの)、源氏との逢瀬を
 偲ぶ幸せを舞い、朝方にはしぼむ夕顔の花のように儚く消えてしまう、
 儚なくも美しい女主人公の物語なのです。                
                             
古典総合研究所』から、参考にしています。


                            

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200210月中旬に、生誕100年記念
「小林秀雄 美を求める心」展、渋谷区立松濤美術館に
行く機会がありました。何とか、東京で鑑賞すること
が叶い、本当に嬉しい数日でした。
小林秀雄が大切にしていたという、ルオーが描いた
「ピエロの顔」の絵皿が展示してありました。
 翌日も、時間を割いて美術館へ直行。「渋谷駅」から
乗り換え、「神泉駅」での細道を下ると、ご婦人が
美術館に向かって歩いていました。なんとなく、
小林秀雄に通じる親近感も湧くものですね。
 
 上京、最後の日に、町田市の旧白州邸「武相荘」にも
行きました。私は、「ここにいる」と、実感を確かめる
ように、しばし、縁側に座って思いにふけっており
ました。そこからの庭を同じように眺めながら、
小林秀雄さんと、白州正子さんが「美について」の
深いお話をされたのではと想像します。

 白州正子は1998年に亡くなっています。
幼年頃から「能」の世界に入り、ご自身も能を舞い、
古典の美を分かりやすいように著書でも大切なもの
として、日本の古典について幾冊も著しています。
 私の理解は浅いものですが、白州正子は、小林秀雄
が思う「美」に最も近い方のように思うのです。


〔上の写真は、「武相荘」の門から、撮ったものです。当日は
「白州正子 うつわ展」が展示されていました。入館者が入らないようにシャッターを押したところ、家屋が傾いていますね。

下の写真は、玄関軒に咲いていました。朝顔、昼顔でしょうか?10月なので、でも 蔓がからんでいるので、その類と思いますが。〕