「向島の夜桜」、和紙を素材に再現しました。

  3月下旬から4月初旬にかけて、満開に咲き誇る隅田川の千本桜の風景は見事です。
  特に、尾形船から眺める夜桜は格別。新鮮な小魚を天婦羅にした料理を舌づつみ、ほろ酔い
  加減で夜空に浮かぶ桜を見て、心地よい気分になるのでしょう。
  
  昔も、今も極楽の世界に足を踏み入れ、ほんの少し日常の憂さを忘れるのだと
  思います。
            

  向島墨堤の桜見物は江戸時代から行われていました。
  八代将軍、徳川吉宗が隅田川の堤防に100本の桜を植えたことが始まりです。向島の北部に
  ある「木母寺(
もくぼじ)」にお参りをしてから、その桜を見物していたようです。

  「木母寺」には梅若伝説があります。室町時代に作られた能楽作品、人買にさらわ
  れた息子の死を悲しむ母親の物語「隅田川」が演じられていました。
         (次ページに、能場面を載せ内容を紹介しています。ご参照ください)
   
  病死した子供、梅若丸を供養するため「隅田院梅若寺」が建てられ、のちに「木母寺」と
  改名され親しまれてきました。観光名所にもなっています。

   
  「向島の夜桜}は、明治35年に中村石松画家によって描かれた作品です。その絵を再現し
  ました。
  平成18年に、すみだ郷土文化資料館で「桜展」がありましたが、この絵をインターネットで
  見た時、満開の夜桜見物に梅若伝説が重なっているように感じ、いつか、和紙を素材にして
  再現したいと思っていました。
   
  桜が散るさまを見て命の儚さをイメージし、また、樹の下にいると不思議な感覚になると言われる
  人もいます。
  私は満開の桜を下から見上げる時、「カエルの卵」を連想してしまうのです。6月に入り、
  石川県、広島県などで、オタマジャクシが降ってきたと話題になっていますが、誕生する前の卵、
  寒天のような袋に黒い目が沢山くついているようすが、桜の花びらに似ているのです。
  黒っぽい芯をつけて桜の花びら重なっているのを仰ぎ見ているうちに、カエルの卵を想像します。
  何の脈絡もない話ですが、多分、春が来たことに繫がっているのでしょう。もっと、詩人になり
  たいのですが、子供が感じとった印象は残るのですね。

  さて、作品作りの一言。モデルの絵は、墨田緑図書館からお借りしました。絵画の写真は
  10センチ四方の大きさです。拡大してもぼやけた感じなので、想像をしながら描いて
  いきました。
  髪型、服装がはっきりしません。洋装もあるので上流階級の人たちが夜桜を
  楽しんでいる、それぞれの思い、会話が聞こえるような感じで仕上げました。

  夜空に浮かぶ桜の花びらに手間がかかっています。ボソボソの和紙をピンセットで細かく
  たくさんちぎり、厚塗りにならないよう、異なった色を何度もなんどもところどころに重ねてい
  きます。
  華やかな桜を表したいと工夫しました。 作品は10号の大きさです。
  
                       
                     (すみだ郷土文化資料館「桜展」から参考にしています)
  

向島の夜桜